円満夫婦ではなかったので
園香に名木沢希咲を紹介したことで、瑞記の行動は堂々としたものになっていた。
希咲とふたりで出張に行くということも園香に遠慮せず報告して来るが、ふたりで行動する時間があまりに多い。正直言ってもやもやしている。
けれど瑞記にいちいちその気持ちを伝えることはしなくなった。
園香と瑞記は価値観がかなり違う。だから園香が不快に感じる気持ちを彼は簡単に理解してくれない。
問い詰めるのは夫婦仲が悪くなるだけだと学習したのだ。
(それに名木沢さんは結婚していると言っていたし、間違いを起こしたりはしないでしょう)
瑞記と彼女の関係は傍から見ると近すぎるように感じるが、さすがに不倫関係まではいかないと思っている。
(あんなに立派な夫がいるんだもの)
瑞記と気が合い仲良くしていても、一線は超えないはず。
実家に戻ってから、園香は希咲の夫だと言う、KAGURAのCEOについて調べてみた。
彼は有名人なので、ネットで検索すると情報は簡単に集まった。
名木沢清隆(なぎさわきよたか)、三十五歳
母親が神楽財閥創業者の孫で、父親とふたりの兄は神楽グループ企業の役職に就いている。
清隆本人は大学を卒業後二年程海外留学をして、帰国後に当時神楽グループでは遅れを取っていたロボット産業に関心を持ち就職。積極的に人材引き抜きなどの組織改革を行い、KAGURAを瞬く間に成長させた。