円満夫婦ではなかったので
インターネット上で調べられる情報を見る限り、希咲の夫は非常に有能なエリートだ。
神楽財閥の一族なら政略結婚だったのかと思ったが、結婚についてはプライベートな内容だからか、既婚とだけ記されていて希咲についての詳細は一切ない。彼女の生い立ちは不明だった。
(名木沢清隆さんか……彼は妻が瑞記と常に一緒にいる現状が嫌じゃないのかな)
希咲が自由に行動しているところから、問題にはなっていないようだが、園香にはそれが疑問だった。
(かなり家庭を蔑ろにしていそうなのに……私と違って器が大きい人で、妻の自由を認めているのかな)
ネットで見つけた写真を眺めながら、園香は頬杖を突いた。
名木沢清隆は写真で見ても驚くくらい眉目秀麗な人物だった。
ビジネスマンにしてはラフな雰囲気のショートヘア。前髪は自然に流して形のよい額を見せている。小さな顔に、きりりとした眉とやや目じりが上がった目。すっきり通った鼻筋に薄めの唇が収まっている。
経歴と肩書、そして容姿。どれをとっても完璧に思える男性だ。
性格を知る術はないけれど、きっと自信に溢れた堂々としたタイプだろう。それだけの実績があるのだから。
希咲の夫の想像以上のハイスペックさに驚く一方で、瑞記とは本当にビジネスパートナーだと納得出来た。
本当に仕事が楽しくて、熱心になっているのだろう。瑞記にも希咲にも園香を蔑ろにしているつもりはきっとないのだ。
だったら園香が感じるモヤモヤは自分の中で解消するしかない。
(瑞記と名木沢さんのことばかり考えるのは辞めよう)
彼らのことで心を乱されるよりも、自分自身のことを考えた方がいい。