円満夫婦ではなかったので
「お父さん、私怪我が治ったら仕事に復帰したいと思ってるんだけど」
夕食の席で、園香は父に切り出した。
「え、でも家庭を優先させたいから辞めたんだろ?」
父は箸を置いて、困惑の表情を浮かべる。母も同様に園香を見ていた。
「辞めた時の気持は覚えてないんだけど、今は外で働きたいと思ってる。瑞記は仕事で不在がちだから家事といってもそれ程ないし、手持ち無沙汰で家にいるよりも働きたくて。元の部署じゃなくて、バイトのような感じでもいいんだけど復帰したいと思ってるの」
他の仕事でもかまわないが、園香はソラオカ家具店が好きだった。出来れば今後も関わりたい。
「そうか……」
「あなた、私も賛成だわ。園香は瑞記くんのことも新居に移ってから出来た知り合いの記憶もないんだもの。そんな状況で家で家事だけをしているよりも、外に出て働いた方がいいと思うの。うちの会社で働くなら安心できるし話を進めて」
園香の言葉に父は慎重な態度を見せたが、母はかなり乗り気だった。
「……分かった。横浜に関連会社がある。向こうの家に戻ってからの通勤を考えるとそこがいいだろう」
「ありがとう。どんな仕事でも頑張るから」
園香はほっとして笑みを浮かべる。今後の生活に希望が見えた気がした。