円満夫婦ではなかったので

「どんな風に違うの?」

瑞記が面倒そうに片眉を上げた。

「そんなことわざわざ言わなくても…」

「言ってくれないと分からないよ!」

彼の言葉に被せてしまったが、園香もストレスが溜まっていた。

この言い争いだけでなく、瑞記との関係自体に無理があると感じている。いつも我慢している。

普段の瑞記の言葉は穏やかだが、全く心が伴っていない。

関係が上手いっておらず溝があるのかと思いきや、仕事についてはずけずけと踏み込んでくる。関心があるのかないのか分からなくなる。

瑞記は自分がどう感じているのか、本当のところを決して口にしないのだ。

「黙ってないで教えてよ。私はどう変わったの? それが気に入らないなら直すようにするけど、何も言ってくれなかったらどうしようもないでしょ?」

瑞記はしばらく黙ったままだったが、ついに園香を睨むようにしながら口を開く。

「以前の園香は、僕の言葉を何でも聞いてくれたんだよ。今みたいにいちいち逆らってこなかった」

園香が息を呑むのと、瑞記がダイニングから立ち去るのは同時だった。

(逆らない?……私が?)

何でも彼の言うことを聞いていたと言うのだろうか。

(信じられない。そんなの私らしくない)

だってそれはまるで意志のない人形のようではないか。

瑞記が昔も今も園香に徹底的な従順を望んでいるのだとしたら……。

(私は瑞記と夫婦ではいられない)

自分で決めた結婚なんだから、関係が悪くても簡単に諦めてはいけないと思っていた。

瑞記の言動に納得がいかなくても、なんとか納得しようとして来たけれど。

その決心はもう崩れてしまいそうだった。

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