円満夫婦ではなかったので
「分かりました。ではそう呼びますね」

「うん。ついでに敬語もなしでね」

「……分かった」


それから園香は思いついた質問を次々と繰り返した。

瑞記は嫌な顔をせずに、答えてくれる。

判明したのは、半年前の結婚式は急なこともあり、身内だけで行った。
園香と瑞貴は横浜のマンションで新婚生活中。瑞記の仕事場はマンションから一時間程の距離。都内のオフィスビルの一室を借りているそうだ。義家族との仲は良好。

「あの、新居の場所は誰が決めたの? 瑞貴の会社からも私の会社からも遠いけど」

園香たちのライフスタイルには、合っていないように感じる。

「ふたりでだよ。それから園香は結婚したときにソラオカ家具店を退職したんだ」

「え……それなら私は今、あなたの仕事を手伝っているの?」

自分が仕事を辞めたなんて信じられない。

(出産なら分るけど、結婚で辞めようと思う?)

自分なりに仕事に打ち込み、やりがいを感じていたのに。

「いや、僕の仕事に園香はノータッチだよ。僕がオンとオフをしっかり分けたいタイプだからね。園香は今は家事を頑張ってくれてるよ」

「そうなの? でも起業して二年じゃ人手が足りなくないの?」

「大丈夫。ビジネスパートナーがいるんだ。名木沢さんって言う元同僚で優秀で頼りになる人なんだ」
< 5 / 170 >

この作品をシェア

pagetop