円満夫婦ではなかったので
離婚の決意
六月二十九日。園香は家の中の整理に追われ忙しく過ごしていた。

仕事を再開したら家を空けることが多くなるが、その間に瑞記が希咲を家に入れる可能が高い。

彼女は既に出入りをし、自由にお茶を淹れるほど慣れている。妻の不在を理由に遠慮などしないだろう。

園香がいない家の中を、希咲に好きにいじられるのが嫌だった。

私室に鍵がかけられたら安心だが、あいにく園香の部屋はリビングと繋げられるような造りでドアは引き戸だ。気軽に鍵をかけられるようなドアに変更するのは難しい。

仕方なく絶対に見られたくないものを、部屋に用意した金庫に入れることにした。

金庫といっても一見そうは見えないデザインのものを選んだので、よく確認しなければ、ただの白い収納ケースに見える。
それをクローゼットの中に仕舞った。

(自宅でこんなに警戒しなくちゃいけないなんて、異常ね)

本来なら体と心を休める為の場所なのに、園香は気が抜けない。

性格も価値観も合わない瑞貴との暮らしは気苦労の連続だ。

しかも彬人から聞いた希咲の過去は酷いもの。
関わるなと言った彬の言葉を、園香は日が経つにつれ、深刻に受け止めるようになっていた。
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