円満夫婦ではなかったので
「どれくらい外泊が続いたの?」
「そのときは一週間くらいかな」
「一週間? それは随分忙しいのね」
園香の仕事も時期によっては残業続きという場合もあるが、さすがに何日も家に帰れない、なんてことなはい。
「……そのときの自分の気持ちが分からないから何とも言えないんだけど、私たち新婚半年だったんでしょ? それで外泊が続いたら不満に思っても仕方ないかなとは思う」
今の園香はかなり客観的な視点でいる。それでもさすがに外泊が多過ぎると感じた。
「それ程仕事が忙しいのならオフィスの近くに引っ越ししたらいいんじゃないかな? 私は仕事を辞めて専業主婦なんでしょ? 住まいが変わっても問題ないと思うけど」
通勤に片道一時間は時間のロスだ。そもそも新居選びのときに、なぜそんな遠くを選んだのだろうと、再び疑問が浮かび上がる。
「……そうだね。いずれ転居を考えてもいいかな」
瑞記は口ではそう言いながらも、乗り気でない様子に見えた。
(仕事のことを家族に口出しされるのを嫌がるタイプなのかも)
夫だと言われても彼について何も分からない。
(こんなことでこの先、大丈夫なのかな)
早くも不安がこみ上げてきた。