円満夫婦ではなかったので
希咲との楽しいディナーを終えてホテルの部屋に戻ると、どっと疲れが襲って来た。

瑞記は寝落ちしてしまう前に、適当にシャワーを浴びる。

部屋の窓から外を眺める。特に綺麗とも思えない繁華街の夜景が映り、瑞記を憂鬱な気持ちにさせた。

希咲と過ごしている時間は楽しかったのに、こうしてひとりになると現実的な考えばかりが浮かんで来る。

窓の近くのソファに座りミネラルウォーターを飲んでいた瑞記は、億劫な動きでスマートフォンを手に取りメッセージアプリを開いた。

園香からメッセージが届いていると思ったのだ。

ところが彼女からは何の連絡も入っていなかった。

(あんな言い争いの後に謝りもしないのか?)

瑞記の気分はますます滅入った。

よく見ると園香からは半月以上メッセージが入っていない。

特に気にしていなかったが、随分と冷たい妻だと思った。

(普通、夫の体調を気遣ったりしないか?)

以前の園香はもっと優しい性格で、瑞記をたてていた。

瑞記の希望を聞き、受け入れていたのに。

(怪我をして記憶がなくなってからおかしくなったんだよな)

はじめは希咲との関係に口出ししなくなったと喜んでいたが、余計な悩みが増えてしまった。

園香は明後日から仕事に出ると言っていた。

反対したが園香は頑固に聞き入れなかった。恐らく予定通り明日出社するのだろう。

考えるとイライラする。瑞記はぎりっと歯ぎしりした。

(一体何が不満なんだ。生活費だって入れてるのに)
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