円満夫婦ではなかったので
「あっという間に彼女の私より優先するようになった。それが不満で話し合いを求めても、ただの同僚なのに気にしすぎってあしらわれて、でも毎日電話してるし仲良すぎるでしょって、文句を言ったら逆ギレ。どうしようもなかった」
ヤケ酒とばかりにワインを飲む青砥からは怒りだけでなく悲しみも感じる。
「それからも私から見るとただの同僚に見えなくて、つい喧嘩腰になって険悪な雰囲気が続いていたんだけど、とうとう別れを告げられたってわけ。信じられないよね。五年も付き合った私よりも、再会したばかりの後輩を選ぶんだもの」
「売り言葉に買い言葉ということは?」
「そうだといいけど、もうずっと前から考えてたって」
なんだか胸の奥がモヤモヤする。顔も見たことがない青砥の元恋人に対するいら立ちが湧いて来るのだ。
「で、いろいろ問い詰めたら、後輩と付き合ってるって白状したの」
「えっ?」
「怪しいと感じた私の勘は正しかったってこと。証明されたのはよかったけど、本当にむかつく」
青砥は思い切り眉を顰め俯く。その数秒後はっとしたように顔を上げ園香を見つめた。
「ごめん! 今日は園香ちゃんの歓迎会なのに暗い話ばかりしちゃって」
「だ、大丈夫です。気にしないでください」
青砥の勢いの押されながら、なんとか微笑んだ。
その後は話題を変えて仕事や同僚の話で過ごし盛り上がり、二十二時前に店を出た。
「今日はみっともないところを見せちゃってごめんね。仕事は切り替えて頑張るから心配しないでね」
「いえ、とても楽しかったです。明日からよろしくお願いします」
青砥とは駅で別れ、電車に乗る。運よく空いている席を見つけて座るとどっと疲れが襲って来て目を閉じた