ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
瞬く間に、ギラついた日差しが降り注いでくる。
まだゴールデンウィーク前だというのに、すでに春のそれじゃないような……
「寝不足にはキツいな」
しょぼつく目を瞬きつつぼやいて、私は日傘を取り出そうとカバンを引き寄せた。
そこへ。
「おはようございます、織江お嬢様」
丁寧な、けれど感情を感じさせない平坦な声に呼ばれ、ローヒールのパンプスが止まる。
顔を上げると、道端に停車した真っ黒なセダンの横に、皺ひとつないスーツ姿の男性が直立不動で立っているのが見えた。
「塩沢さん……おはようございます」
副社長と顔を合わせるために無理やり上げていたテンションが、努力の甲斐なくずぶずぶと落ちていくのを感じた。
「会社までお送りします。どうぞお乗りください」
お父さんの秘書・塩沢光雄がここに現れる時は、たいてい厄介ごととセットだ。
これまでの経験で身に染みている私は表情を固くしたが、ここは駅近で人通りも割とある。変に目立たない方がいいと判断して、しぶしぶ開けてもらったドアから後部座席へと乗り込んだ。