ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「お二人はお付き合いされてるんですよね? 全然知らなくて、あの夜のことは本当に申し訳ないと思ってますが――」
「ストップ。恋人がいたら、こんな風に他の女性を家に上げたりするはずないだろう。一体どんな男だと思ってるんだ、オレのこと」
眉をひそめつつ、貴志さんはきっぱりと言う。
「従姉弟だからな、多少気安い関係に見えるのかもしれないが、付き合ってはいない。彼女のことは身内としか思えないし、向こうも同様だ。お互いに、恋愛感情を抱いたことは一度もない」
「え……」
そ、そうなの? 2人は恋人同士じゃない?
私の早とちり……?
た、確かに……そういえば、今朝の高橋さんは冷静だった。私を同居させることを事前に聞いていたとすれば、恋人だという説は怪しい、かも。
……ううん、とはいえ。
「でも、他にもお付き合いされてる方、いますよね。アイドルの彼女とかモデルの彼女とか。私なんかがいたら、今まで通り自由にお持ち帰りできなくなりますよ?」
「あぁそれか」
頷いた彼は苦笑交じりに肩をすくめる。
「オフレコだけど、実はオレはただのカモフラージュ要員。彼女たちと付き合ってる男は別にいる」
「……まさか、それを信じろと?」
「信じてもらうしかないな。事実だから」
飄々と言って、貴志さんは疑いの目を向ける私を押しのけると、「ここが君の部屋」と廊下に並んだドアの一つを開けた。