ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「お二人はお付き合いされてるんですよね? 全然知らなくて、あの夜のことは本当に申し訳ないと思ってますが――」

「ストップ。恋人がいたら、こんな風に他の女性を家に上げたりするはずないだろう。一体どんな男だと思ってるんだ、オレのこと」

眉をひそめつつ、貴志さんはきっぱりと言う。

「従姉弟だからな、多少気安い関係に見えるのかもしれないが、付き合ってはいない。彼女のことは身内としか思えないし、向こうも同様だ。お互いに、恋愛感情を抱いたことは一度もない」

「え……」

そ、そうなの? 2人は恋人同士じゃない?
私の早とちり……?

た、確かに……そういえば、今朝の高橋さんは冷静だった。私を同居させることを事前に聞いていたとすれば、恋人だという説は怪しい、かも。

……ううん、とはいえ。

「でも、他にもお付き合いされてる方、いますよね。アイドルの彼女とかモデルの彼女とか。私なんかがいたら、今まで通り自由にお持ち帰りできなくなりますよ?」

「あぁそれか」
頷いた彼は苦笑交じりに肩をすくめる。

「オフレコだけど、実はオレはただのカモフラージュ要員。彼女たちと付き合ってる男は別にいる」

「……まさか、それを信じろと?」
「信じてもらうしかないな。事実だから」

飄々と言って、貴志さんは疑いの目を向ける私を押しのけると、「ここが君の部屋」と廊下に並んだドアの一つを開けた。

< 104 / 345 >

この作品をシェア

pagetop