ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「そっちは誰でもよかったかもしれないけどな、こっちは『はいそうですか』って完結できないんだよ」
ムーディなオレンジ色の照明を背にして、翳った表情はよく読めないけれど……ぞんざいな口ぶりの中になぜか本気の苛立ちのようなものを感じて、ドキリとした。
「……あの夜から、織江のことが頭から離れない」
「え」
ショートしっぱなしの思考回路のまま持ち上げた私の視線が、どこか切なげな眼差しと交差する。
「責任、取ってもらおうか?」
掠れた声が言い、シプレ系の香りがぐっと濃くなって――息を飲んだ私の唇に、次の瞬間、激しいキスが降ってきた。
「ん、んんっ……や、……っ!」
抗議の声を封じるように、意志を持った舌が浸入してくる。
囚われた舌をきつく吸われ、ビリビリ感電しそうなほどの快感が襲い……抗う手が痺れたように力を失っていく。
身体は正直だ。
後頭部を押さえられ思うさま貪られる濃厚な口づけがあの夜を呼び覚まし、身体の奥深くがジワリと微熱を帯びるのがわかった。
「あぁ……やっぱり甘いな。この唇は」
わずかに息を弾ませた貴志さんが、満足げに濡れた口元を緩める。
甘いわけないじゃないか、と思うものの、想い人に求められる喜びに、本能が反応しそうになる。
……って、ダメだダメダメ、何考えてるのっ。