ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
でも。
頭のどこかで、小さく叫ぶ声がする。
これ以上彼と関わって、幸せに浸かって、離れられなくなったらどうするの?
不相応な夢を見てしまわないと、誓える?
彼には彼の、ふさわしい相手がいるはず。
そしてそれは、私じゃない。
思い出して……
はぁ、っと重苦しいため息が聞こえて、ふと瞼を開けると貴志さんは私を組み伏せたまま、その表情を曇らせてこちらを見下ろしている――と、そこで初めて、私は自分の頬が濡れていることに気づいた。
「っあ、の……これは……っ」
やだ、なんで私泣いてるの?
ますます意味不明な女になっちゃうじゃない。
オロオロと揺らした視線が、貴志さんのそれと宙で重なった――時。
RRRRR……
タイミングよく、と言うべきか。どこまでも無機質に着信音が響いた。
聞き慣れたその音が自分のものだということには気づいたけれど、ベッドに縫い留められたこの態勢ではどうすることもできない。
貴志さんもそのことに気づいたんだろう。
私の上から緩慢に体を起こし、さっき床に落ちたカバンからこぼれたのであろうスマホを床から拾い上げてくれ――たちまち、その眉をぐぐっと寄せた。
「S……?」