ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
◇◇◇◇

「お願いしますっ高橋さんから副社長になんとか言ってください! 横暴すぎます、こんなの」

数日後、私はなんとか、休憩室で高橋さんの捕獲に成功。
邪魔が入らないようにと、わざわざ場所を非常階段へと移して頭を下げていた。

前のめりになって訴える内容は、以下のこと。

ストーカー被害を心配してくれるのはありがたいが、副社長と社員が同居なんてありえない。噂になったら副社長の評判にも傷がつく、信頼する秘書であり従姉でもある高橋さんから副社長を諫めてほしい――と。

もはや、彼女だけが頼りだ。

貴志さんは恋愛感情がないかもしれないが、もしかしたら彼女の方は違うかもしれない。女優並みの演技力で、平気なふりをしてるだけで。
そうじゃなくても、自慢の従弟が妙な女に振り回されるなんて、きっといい気分じゃないだろう。

とすれば、同居解消にむけてきっと強力な味方になってくれるはず……。


「なるほどぉ、こりゃなかなか手強いわ」

階段の手すりにもたれるようにして腕を組んだ高橋女史が、ボソッと、何か……聞こえたような?

「え? なんておっしゃいました?」

「んーん、それでまさか、彼に何かされた?」

真剣に話を聞いてくれるらしいキリリとした表情に、さすが頼りになるなと胸を撫でおろしてから、少し返事に困って曖昧に首を振った。

「いえ、特に何か、というわけでは……。おおむね、紳士的に接してくださいます」

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