ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
そう、初日以外は今の所(まだ数日だが)、ごく普通の同居人という感じではある。というか、マンションのカードキーを受け取って連絡先の交換を済ませた後は、私がわざと食事とか通勤とか生活時間をずらしていて。
そもそも会う機会自体が少ないんだけど。
「……チッ、意外と草食ね。様子見中なのかしら。情けない」
「え? 高橋さん? 何かおっしゃいました?」
「んーん、でも何も被害がないなら、問題はないと思うけど。家賃取られてるわけじゃないんでしょ? 服や靴も全部副社長のポケットマネーで用意したし、あなたに請求はいってないはずよ。乗り換えがなくなって、通勤も楽になったんじゃない?」
うぅ。その通りだ。私の側にマイナス要素は皆無。
ノリちゃんに相談した時も、大体同じような反応だった。
『女には不自由してない人だし、ボランティア感覚なんでしょ』って。
そりゃ、確かにそうかもしれないけど……彼女たちは、すべてが始まったあの夜のことを知らないからな……
「でっでもですね? タダであんなすごいタワマンに住まわせていただくなんて、本当に緊張して、気が休まらないんです。いっそ家賃を取っていただけるなら気も楽なんですが、そんなお金私に払えるはずありませんし……」
“アドバンテージは利用する”とか言っていた。これから一体何が起こるのか、考えるだけで心臓へ負荷がかかる気がする。早くなんとかしなくちゃ……
「……ほぅほぅ、意識はしてる感じね。あと一押しってとこかしら」
それに、いつSからの連絡があるかわからない。
この前みたいに、貴志さんがその場にいて何も話せないという事態は避けた――
「え、何かおっしゃいました?」