ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「んーん、なんでもない。ところでそういうこともろもろ、副社長には伝えてみた? 嫌がってるのに無理強いするような人じゃないと思うのよ?」

「えっと……」

めちゃくちゃ無理強いされてます、けど……

――もしオレから逃げるなら、監督責任を問おうか。ホテルで逆ナンされた、あの夜のことをぶちまけて?

うぅ、言えない。
脅されてるとか、その内容とか、それは絶対話せないっ。


「なかなか本気にしていただけないみたいで……」

若干泳ぎ気味な私の目線に気づいたかどうかわからないが、高橋さんは「そっか。うん、わかった」としっかりと頷いてくれた。

「大丈夫、私は山内さんの味方よ。あなたの代わりに、私があいつにガツンと言ってやろうじゃないの」

「ほ、ホントですかっ?」
「もちろんよ、私に任せて!」
「はいっ」

あぁよかった、さすが高橋さん! 頼りになる! と肩から力が抜けた――途端、ガシッと手が掴まれた。
「え?」

「善は急げよ。今からさっそく、直談判に行きましょう。副社長、今なら社内にいるから」

「じ、直談判っ?」

顔合わせたくないんですけど!?

逃げ腰になる私を満面の笑みで捕まえたまま、高橋さんは非常階段からフロアへ戻り、その足で目指したのは――当然副社長室だった。


コンコン

「失礼します、副社長!」

< 115 / 345 >

この作品をシェア

pagetop