ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「んーん、なんでもない。ところでそういうこともろもろ、副社長には伝えてみた? 嫌がってるのに無理強いするような人じゃないと思うのよ?」
「えっと……」
めちゃくちゃ無理強いされてます、けど……
――もしオレから逃げるなら、監督責任を問おうか。ホテルで逆ナンされた、あの夜のことをぶちまけて?
うぅ、言えない。
脅されてるとか、その内容とか、それは絶対話せないっ。
「なかなか本気にしていただけないみたいで……」
若干泳ぎ気味な私の目線に気づいたかどうかわからないが、高橋さんは「そっか。うん、わかった」としっかりと頷いてくれた。
「大丈夫、私は山内さんの味方よ。あなたの代わりに、私があいつにガツンと言ってやろうじゃないの」
「ほ、ホントですかっ?」
「もちろんよ、私に任せて!」
「はいっ」
あぁよかった、さすが高橋さん! 頼りになる! と肩から力が抜けた――途端、ガシッと手が掴まれた。
「え?」
「善は急げよ。今からさっそく、直談判に行きましょう。副社長、今なら社内にいるから」
「じ、直談判っ?」
顔合わせたくないんですけど!?
逃げ腰になる私を満面の笑みで捕まえたまま、高橋さんは非常階段からフロアへ戻り、その足で目指したのは――当然副社長室だった。
コンコン
「失礼します、副社長!」