ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

抑えた色味の家具で統一された、シックな雰囲気の副社長室。

高橋さんに手を引っ張られて足を踏み入れるとすぐ、窓際の大きなデスクでパソコンに向かう存在感抜群のその人へ目が吸い寄せられた。

「ん? どうした?」

顔を上げた彼の、漆黒の瞳が私を捕らえる。
瞬く間に走り出してしまう鼓動を知られたくなくて、とっさに目を逸らしてしまった。

そんな私の耳に聞こえてきたのは「副社長」と呼ぶ厳粛な声。高橋さんだ。

「ただいま、山内さんから副社長との同居を解消したいと申し出がありました」

注がれる強い視線を感じたが、足元を見つめてぐっと耐える。

「山内さんに良かれと思って私も賛成したわけですが……本人の希望、というものもありますし」

そう、その通り。
心の中でこくこく頷く私。
彼女に相談したのは正解だった。
やっぱり彼女も、副社長のことを憎からず思ってたに違いない――

「何事も控え目で真面目な彼女は、家賃の負担ができないのが心苦しいようです。なので、これは私からの提案なのですが、家賃相当分、家事をお願いなさっては?」

……ん?

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