ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
<では、契約締結についてのスケジュールと詳細は、追ってこちらからご連絡します>
《畏まりました。よろしくお願いします》
<こちらこそ。お疲れさまでした>
流暢な英語のやり取りが途切れ、スクリーンから相手の顔が消える。
電気が点灯した会議室で、私や貴志さんを含め、10名ほどのメンバーが「お疲れ」「お疲れさまでした」と声を掛け合った。
「みんな、よくやった。ありがとう、上々の滑り出しだな」
貴志さんに褒められて、みんなの顔は充実感に輝いている。
今日の会議は、上海に進出する日系企業支援を柱とした、一大プロジェクトのもの。シンガポール本社や上海からもオンラインで関係者が参加し、白熱した議論が交わされた。
私は単にサポート要員としてお手伝いしているだけだが、それでもそんな場にいられることがなんだか誇らしい。
頬を緩ませながら互いをねぎらうやり取りに耳を傾けていると、急に何人かが私の方を見た。
「山内さんが作ってくれた、あの日系企業の動向と傾向が一目でわかるデータ、かなり効果的だったわよね?」
「地域差に注目するなんて考えつかなかったなー。すごくわかりやすくて、先方も驚いてたよな」
「最後に追加でギリギリリクエストしたヤツだろ、時間ないのによく作ったなって感心した」
「どんな言葉より説得力あったし」
「はぁ、そ、そうでしょうか?」
会議中、エリートと名高い営業部の精鋭たちの鋭いやり取りに舌を巻いているばかりだった私は、思いがけない賞賛に冷や汗をかきかき首を傾げるしかない。