ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

食後はリビングのソファへ移動。ハーブティーをいただく頃には、外の雨は豪雨と呼んでいいレベルになっていた。

一人じゃないし恐怖を感じることはないが、窓ガラスに激しくぶつかる雨粒は一向に途切れない。

酔っぱらいのぼやけた思考力で帰り道は大丈夫かなぁと呑気なことを考えていたら、隣で何やらゴソゴソと音が……

「ほら、今日の記念」

貴志さんが差し出した小さな紙袋は、昼間寄った小町通のお店のものっぽい。

「記念……ですか? ありがとう、ございます」

ハテナマークを浮かべつつ受け取り、中に入っているものを手の平へと滑らせた。

「っこ、これ……!」

瞠目して、息をのむ。
それは、淡いピンク色の紫陽花モチーフのペンダント。レディミツコに似てるなと思って、売り場の前で買おうか悩んだヤツだったから。

「欲しかったんだろ?」

み、見られてたんだ……。

「わ、私が、いただいていいんですか?」
「おいおい、他に誰がいる?」

その瞬間、私の心臓がどれほど切なく、狂おしい音を立てたか、彼は知らないだろう。

「あり、がとう、ございますっ……一生大事にします!」

震える声でたどたどしく感謝の言葉を述べる私を、「そこまで感動されるようなものでもないけどな」と困ったような声が笑う。
それから。
「ほんと、欲がないな。これくらい、いくらでも買ってやるのに」

優しく言って、私の手からペンダントを摘まみ上げた。

うぬぼれちゃいけない、うぬぼれちゃ……
彼にとってはプレゼントなんて、特に意味のある行動じゃないんだから。

「ほら、こっち来い。つけてやるから」
「は、はいっ」
引き寄せられるまま、彼の胸元へ顔を埋める。
震えてしまいそうな唇を、ギュッと噛んで耐えながら。

< 166 / 345 >

この作品をシェア

pagetop