ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
――多少力業を使っても、彼女を手に入れたい。
同居を始める前、そんな風に言ったことを覚えてる。
最初は、もう一度抱けさえしたら満足するはずだった。織江のことが気になるのは、身体の相性の良さが忘れられないせいだと思ってたから。
だから佐々木のことがあった時、彼女には申し訳ないがこれを利用しない手はないなとほくそ笑み、ストーカーから守るという大義名分のもと自宅に住まわせることにした。
とはいえ、当初はホテルでセレブな暮らしを堪能させてやろうと計画を立てていて、実際シェルリーズのスイートも確保済みだったんだが。
翌朝になってなぜか気が変わる。わざわざ会いに通うのも面倒だ、オレの家に囲い込んでしまえばいいじゃないか、と。
そこで急遽手配を開始。もろもろの準備のためにオレが迎えに行くことは叶わず、その役目はユキに頼んで……。
ユキは反対した。いずれ来る見合いの相手に知られたら具合が悪いだろう、というのだ。最もだとは思いながらも、その時はその時で言い訳を考えればいい、となぜか考えは変わらなかった。
そして、そんな自分にちょっと驚いた。
そもそもオレは、プライベートな空間や時間を他人に乱されるのが好きじゃない。あのマンションを買ってから、中に入れた女と言えばユキとハウスクリーニングの業者だけだし。
なのに彼女のことだけは、躊躇なく同居を決めていた。なぜ彼女だけが特別なのか……自分でもよくわからないこの感情は一旦スルー。
なんとなく浮かれ気味であることを自覚しつつ、知り合いのデザイナーにごり押しで頼み込み、空いてる部屋に家具を設えた。しぶるユキへブラックカードを押し付けて服も靴もカバンも、不自由しないように必要なすべてを買い揃えてもらって。織江を食事へ連れて行き時間稼ぎまでして、なんとかかんとか1日ですべてを整えさせた。
――ええと、まさか……、私たち、一緒に住む、ってことですか?
――むしろ、ここまで来てそれ以外のどういう選択肢があるのか聞きたい。
――昨日の今日でいい場所が見つかるわけないだろ。焦って探すとはずれくじを引くぞ。それにこういう場合、新しい男ができたと認識させた方が相手も諦めやすいし。
そうしてかなり強引にではあるが言いくるめ、同居を認めさせた。やりすぎだっただろうか、と思わなくもない。だが、ダラダラ無駄な時間を過ごすよりはマシだろう?