ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

それなりに名の知れたシティホテルの高層階、バーカウンターでクダを巻く中条瑠衣はすぐに見つかった。

「えぇええっ嬉しいぃいい! 村瀬さんが来てくれるなんてぇ!」

オレが近づいて行くと、大げさな歓声を上げて抱き着こうとしてきた。もちろん手が届く前にサッと躱したが。

「んもう、ツレないなぁ。そんなトコも素敵ですけどぉー」

バーのスタッフもどうしようもなかったんだろう。
眉を下げて申し訳なさそうにしている彼に大丈夫だと頷いて見せ、瑠衣のむきだしになった腕を掴んだ。
「ほら帰ろう」

「えぇーー、一緒に飲みましょうよぉ。もー霧島さんてば、忙しいって全然相手にしてくれなくてぇつまんなーい」
「オレが来たら帰るって約束だったんだろう?」

「えーやだやだー」
「やだじゃない、君は一体いくつだ」
「んふ、ぴちぴちのーハ・タ・チ♪」
「ぴちぴちって……しかもいくつサバ読んでるんだ?」

すぐバレる嘘をつくなとツッコむと、何がおかしいのかカウンターをバシバシ叩き、ケタケタと笑い声をあげている。

なんなんだ、この酔っ払いは。
一応トップモデルだろ、大丈夫なのか?

「ねぇお願いしますぅ。1杯だけ付き合って?」

バニラのような甘ったるい匂いも、人工的な長すぎるまつ毛に縁どられた上目遣いの目も、心底鬱陶しい――だが、騒がれると面倒なのも事実だ。

オレは仕方なく、隣のスツールに浅く腰かけた。

「彼女と同じものを」

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