ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

――彰さんっていう婚約者がいなければ、あたしがお見合いを受けるはずだったのよ。お姉ちゃんはあたしの代わりに選ばれただけ。返してもらって何が悪いの? お父さんだってそう思うでしょ?

――し、しかしだな、先週ようやく、多忙の村瀬社長から見合いの日程について具体的に進めようという話をもらったばかりなんだぞ? 写真だって受け取ってもらっているし。それでもう別の人間に、というのはちょっと……

――あら、そんなことどうとでも言い繕えばいいんですよ。キララさんの方が数倍相応しいんですから。

佐々木君の実家が社長とはいえそれほどの名家ではないことを不満に思っていたお継母さんは、もちろん婚約破棄に大賛成。2人がかりで説得されたら、お父さんが勝てるわけはなかった。

――向こうだって、若くて可愛いキララさんが相手の方が嬉しいに決まっています。織江さんのお相手は……そうねぇ、どなたか、メッキ(・・・)のお友達にでも紹介していただいたら?

――あ、それより彰さんとヨリ戻せば? 今なら結婚できるよ。嬉しいでしょ?

――まぁキララさん、なんてお優しいこと! さすがだわぁ。

私の意見なんて一度も聞かれることなく、それは決定していた。

さらにキララは私が彼の近くで働き続けることも我慢ならなかったらしく、私はその翌日、一星系列である派遣会社から契約の更新不可を告げられた。

私は終始、特に抗議しなかった。しても無駄だとわかってたから。
今月末までは契約が残っているため、引継ぎだけはしっかりしよう、と考えていた。

ところが今朝、前触れもなくキララが会社に乗り込んできて「今日からお姉ちゃんの代わりにあたしが働くわ」と宣言。これには本気で卒倒しそうになった。
今日副社長が出張から帰るという情報を仕入れたキララが、派遣会社とも打ち合わせることなく、これまたごり押しで突撃してきたようだ。

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