ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
――スペック重視で恋人を乗り換えるし、とにかくお金への執着がすごくてパパ活みたいなこともしてるみたいで。
一緒に住んでいた限りでは、むしろ堅実すぎる暮らしぶりだと思ったが。
真面目なふりをして実は浪費癖でもあったんだろうか。
あるいは……貢いでる男がいるとか?
「ぁあああくそっ!」
こんな時でさえ、彼女に男がいると想像しただけで胸が焦げるような嫉妬を感じてしまう自分が情けない。
忘れてしまえばいい。
もっといい女はそこら中にいる。
忘れてしまえ。
忘れてしまえ、たら……楽なのに。
握りつぶした缶を額に押し当て、喉の奥で低く呻いた。
こうして家で一人になると思い出すのは、このリビングで勉強していた彼女の真剣な横顔、オレに揶揄われて真っ赤になってむくれていた顔、料理を褒められた時のはにかんだ笑顔……
すべてが意図されたものだったなんて、信じたくないと叫んでる自分がいる。
「……オレも大概諦めが悪いよな……」
本人が認めてるんだぞ。
それ以上の、どんな真実があるっていうんだ。
力なくかぶりを振り、次の缶を取りに行こうと腰を上げる。
そこへ。
RRRRR……
どこかから着信音が鳴った。