ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
先週金曜日の夜、オレはホテルのバーで一人の女性に声をかけられた。
――お一人ですか?
そうやって誘われた経験が、ないとは言わない。
だが、その夜飲んでいたのは7つ星と言われる最高級ホテルの上階にあるバー。遊び相手を探すようなヤツにとっては、かなり敷居が高いはず。
だからこそ、オレも一人でゆっくり飲もうと立ち寄ったわけで。
当然断るつもりで、視線を上げた。
そこに立っていたのは、大きめのウェーブがかかったロングヘアの女。
派手さはないが、清楚な雰囲気の美人だった。
オレより少し年下、20代後半くらいだろうか。
襟元が大きく開いた白のトップス、女性らしいネイビーのフレアスカート、仕事帰りと言ってもおかしくない清潔感のある装いは、その場の上質な空気にもごく自然に馴染んでいた。
下品にならない程度に露わになった肌と、瑞々しいフルーティな香り、媚びすぎないメイクのバランスも悪くない。清純さとほどよい色気が同居していて、男の想像力をこれでもかと刺激してくる。
全部計算ずくだとしたら相当したたかだな、気を付けなければ――と、そこまで観察したところで気付いたのだ、彼女がうちで働く社員だということに。
――隣、座っても構いません?
カン違い? いや、違う。
間違いない、よな? 彼女は……
これは一体どういうことだ?
――っ、あぁいいよ、どうぞ。
瞠目したまま、気づけば隣のスツールを勧めていた。