ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
19. 織江side 急転する運命
◇
その日は、朝早くに目が覚めた。
とはいえ夏の日の出は早く、もうカーテンの隙間からは眩しい光が差し込んでいたけれど。
手早く身支度を済ませて、自室を出る。
昔ながらの狭く急な階段を降り、1階へ。
誰もまだ起きてこない早朝が、最近では唯一ホッとできる時間かもしれない。
静まり返った家の中を進み、廊下の窓から、ただの“土地”になってしまった庭を眺めた。
キララと佐々木君の婚約が白紙となり、当然新居建築の話もなくなった。
次はここに貴志さんとの新居を、とお継母さんは目論んでいるらしいが、キララはタワマンに住むのだと言い張ってる。
本人からはっきり、『この見合いは断わる』って言われてるのに、全く堪えてないらしい。『絶対にキララを好きになるに決まってる』のだそうだ。そのポジティブ思考はある意味才能かもしれない。
――彼女を義姉と呼ぶなんて、まっぴらだ。
あの時は、あれが最後だと思った。
彼が見せた怒りは凄まじかったから、もう二度と私に興味なんて持つわけないと思ってた。なのに。
――へぇ……これが君の値段ってことか。
先週末の夜、なぜか突然私の前に現れた貴志さん。
あの苦し気な眼差しが、脳裏から離れない。
その日は、朝早くに目が覚めた。
とはいえ夏の日の出は早く、もうカーテンの隙間からは眩しい光が差し込んでいたけれど。
手早く身支度を済ませて、自室を出る。
昔ながらの狭く急な階段を降り、1階へ。
誰もまだ起きてこない早朝が、最近では唯一ホッとできる時間かもしれない。
静まり返った家の中を進み、廊下の窓から、ただの“土地”になってしまった庭を眺めた。
キララと佐々木君の婚約が白紙となり、当然新居建築の話もなくなった。
次はここに貴志さんとの新居を、とお継母さんは目論んでいるらしいが、キララはタワマンに住むのだと言い張ってる。
本人からはっきり、『この見合いは断わる』って言われてるのに、全く堪えてないらしい。『絶対にキララを好きになるに決まってる』のだそうだ。そのポジティブ思考はある意味才能かもしれない。
――彼女を義姉と呼ぶなんて、まっぴらだ。
あの時は、あれが最後だと思った。
彼が見せた怒りは凄まじかったから、もう二度と私に興味なんて持つわけないと思ってた。なのに。
――へぇ……これが君の値段ってことか。
先週末の夜、なぜか突然私の前に現れた貴志さん。
あの苦し気な眼差しが、脳裏から離れない。