ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
わかってる。
彼が求めているのは、手軽に遊べて嫉妬したりしない、引きずらない、大人の女なのだ。
もちろん私が処女だってことは、ギリギリ最後まで絶対に知られちゃいけなくて――
「なぁ、いい加減に本当の名前、教えてくれてもいいだろう?」
キスの合間、強請るように聞かれた時も、なんとかそっけなく肩をすくめて見せた。
「い……言う必要、ありますか?」
一晩だけの遊び。
軽い戯れ。ゲーム。
だから互いの名前なんて必要ない。
彼が望んでいるであろう関係を、言外に滲ませる。
でも……
なぜか彼はむっとしたように黙り込み、不満げに見下ろしてくる。
あれ、私何か……間違った?
僅かに不安を覚えて身をすくめていると、
「ま、身体に聞くからいいけど」
不穏な台詞が聞こえ、真上にある喉元から勢いよくネクタイが引き抜かれるのが見えた。
「言っておくが、自分で望んだんだからな。覚悟しろよ?」
うっそり微笑む彼の双眸が、妖しく輝く。
獰猛な牙がチラリと見えた――気がした。