ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
それまで一言も発しなかった貴志さんが落ち着いた様子で……いや、むしろ面白そうに口角をあげ、「なるほど、そうくるか」とつぶやいたのだ。
続けて、「理由は?」との問い。
下手な言い訳をしたところで、この人は納得してくれないに違いない。ほんの少し躊躇った後、覚悟を決めた私はポケットから折りたたんだ紙を取り出した。
今井さんからもらっておいてよかったと密かに安堵しながら、それを座卓越しに差し出す。
受け取った彼がそれを広げていく。
村瀬社長夫妻も身を乗り出して覗き込み――3人が息を飲むのがわかった。
【セレブ御用達・老舗百貨店の闇を暴く!】
【元従業員が告発、驚愕パワハラ地獄の実態】
【強欲社長夫妻に巨額背任疑惑!?】
A3ほどのサイズの紙の中央、黒の帯に白抜きのタイトルが走り、目元を隠してはいるが、お父さんとお継母さんの写真が何枚か。
本文には、一星の経営陣によるテナント業者へのパワハラから始まり、各取引業者からのリベートが都内のコンサル会社を通じて一星経営陣へ還流している不正疑惑があることまでが克明に記されている。
「なななな、なんだっこれはっ……」
見出しが目に入ったんだろう。
お父さんは場所も弁えず貴志さんの手からそれをひったくり、戦慄きつつ猛スピードで流し読む。