ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「週刊リアルデイズのゲラです。今週号では見送りになりましたが、来週にでも掲載になるかもしれません」

ハッタリをしれっと答えてやると、「まぁっ週刊誌ですって!?」と、お継母さんも腰を浮かせたり降ろしたり、相当動揺している。

「ねぇ、ちょっと何よ、どうしたのよー?」
蚊帳の外のキララが不機嫌そうに声を上げるが、もちろんそれどころじゃない、といった様子の両親に黙殺された。

「織江、まさかお前がこの、告発した『元従業員』なのか!?」
「えぇ、そうです」

「なんってことを……!!」

絶句してゲラをぞうきんみたく絞るお父さん、目を剥いて崩れ落ちるお継母さん、訳が分からずむくれるキララ……

けれど向かい側の3人の態度は、対照的に淡々としたものだった。

なんとなく、おかしいなと思い始めた。
落ち着きすぎてない? 村瀬社長夫妻もそれほどびっくりしていないような……。

まるで全部知っていたみたいだ、と口の中で独り言ちた瞬間、一つの考えが閃いた。

まさか……まさか、だけど。

――申し訳ないが、ここらで引かせてもらいますよ。

貴志さん、関係してたり、しないよね?

そりゃ、リーズニッポン、ひいてはリーズグループなら、どんなニュースだって記事だって圧力をかけて掲載阻止できそうだけど。

さすがにそれはない、でしょう? 理由がない。
そもそも彼は、こんな記事のことなんて知っているはずはないし……。

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