ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

え……?


何を言われたのか、とっさに理解できなかった。

今井さんが、塩沢の所へ?
どういうこと……?

混乱する私を憐れむように見て、噛んで含めるように男は続ける。

「では織江お嬢様、この質問に答えてください。あなたは今井氏に金を払いましたね? そして先日彼から、やはりこれは受け取れないと返された。事実ですか?」

「え? え、えぇ、それは……はい、事実、ですけど」

ブルームーンでの出来事を思い出しながら正直に頷いた途端、両親が息を吹き返したように猛然と立ち上がった。

「そういうことか、織江! 家族を売るとは、なんて奴だ!」
「お金を払ってありもしない記事を書かせようとしたのね! 私たちを陥れようと! 恐ろしい子!!」

キララもまた、どこまで理解してるのかわからないが、「お姉ちゃん、それって犯罪よ!」と叫ぶ。

「ち、違うわ! 嘘なんかじゃ……取材に必要かと思ってっ……!」

狼狽えつつも首を振って否定する。あのお金はそんなものじゃない。

記事にできるかどうかわからないネタを追ってもらうのだ。せめて交通費程度は負担しようと思って……だからそんなに高額を渡したわけじゃない。今井さんから返ってきたのも本当だけど、『上司のゴーサインが出たから、経費として落とせることになった。だから必要ない』ってことで……

説明しようにも、警察を呼ぼう訴えてやる名誉棄損だ、と激高している3人にはどんな言葉も届かない。

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