ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
おかしい。なんだか、変だ。どうなってるの?
こんなはずじゃ……
ジワリと額に汗を滲ませて、畳に手をついた。
バクバクとうるさい鼓動が不安を煽り、上手く口が回らない。
冷静な思考力まで奪われていくようだった。
「記者から金が返って来た、というのは、オレが行き合わせた新宿のバーでのやり取りということで合ってるか?」
貴志さんから静かに質されても、まともに顔を見ることもできなかった。
きっと彼もこの展開に呆れてるだろう。
ただ小さく震えて頷き、言葉を絞り出す。
「でもっ決してでっち上げの記事を頼むためのお金ではなく――」
「見苦しいわよ、お姉ちゃん。恥ずかしくないの?」
キララの言葉が、耳に痛かった。
この状況では何を言ったところで、ただの言い訳にしか聞こえないだろう。
血の気の引いた私を冷笑とともに見つめた塩沢は、沈黙を続ける村瀬家へ向かって恭しく手をつき頭を下げた。
「大変お騒がせいたしました」
その様子を見て、大慌てでお父さんたちもバラバラと膝をつく。
「今回の一件は、次女・キララさんに嫉妬した長女・織江さんが一人で勝手に引き起こしたもの。知らなかったとはいえ、このような騒動に巻き込んでしまいまして、本当に申し訳ありませんでした」
「ひとえに親の監督不行き届きでございます。こんな娘に育てしまうとは……誠に面目ない」
深く頭を下げたお父さんが、私を忌々し気に流し見る。
「大変恐縮ではありますが、この場はここで失礼させていただき、後日改めて謝罪に伺いたく存じます」
「お父さんお父さんっあたしのお見合いはどうなるのよっ」
「そうですよ、キララさんのお見合いまで取りやめにすることはないでしょう?」
「バカッそんな話は後だ後ッ!」