ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
エピローグ 秋天の紫陽花
時間は止まることなく確実に進み――10月も下旬に差し掛かった。
高い空に秋特有の薄い雲が流れる好天のその日、私は駅前で買ったコスモスの花束を抱え、都内のお寺に併設された墓地を訪れていた。
そこは緑に囲まれた、都内とは信じられないような静かな場所。
もうしばらくしたら、きっと紅葉が見事だろう。
その頃にまた来ようかな。
そんなことを考えながら、ゆっくりと歩を進める私。
同じようなデザインの区画が延々と続く中迷いなく目的の場所へとたどりつく。もう何度も通った道だから、慣れたものだ。
私は、持ってきた花束を墓石の前に置いた。
線香に火をつけてから手を合わせれば、いろんな思い出が次々浮かんできて、鼻の奥がツンとする。
「やっぱり一人は、寂しいな……」
独り言ちるように言い、胸元に光る薄桃色のチャームを指で探った。
視界はみるみるジワリと滲んで――
「誰が一人だって?」
不服そうに背後から響いた低い声。
私はハッと振り返った。