ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「ごめんなさいね、朝早くから突然。ちょっとお邪魔するわ」
スーツ姿の高橋さんは小柄な体からは想像できないくらいの力で私をぐいぐい押しのけ入ってくると、そのまま後ろ手にドアを閉めた。
「あの……どうかしたんですか?」
いつも朗らかで優しい彼女の常にない強引さにあっけにとられる一方で、嫌な予感がした。
だって、彼女は副社長の専任秘書。そして、(もしかしたら)恋人。
彼女がここにいるということは、もしかして……
「昨日の件、副社長から聞いたわ」
「っ!」
やっぱり、と一気に血の気が引いた。
岡田さんの推理は当たっていたんだ。
やっぱり高橋さんは副社長とお付き合いしていて。
彼から打ち明けられたんだ、私と過ごした夜のことを。
それで、「辞めてちょうだい」って要求とか、あるいは慰謝料請求とか……社内だとなかなか話せないから、わざわざここまで来たんだろう。
経験ゼロで働き始め、散々迷惑をかけてお世話になっておきながら、恩を仇で返すような真似をしたのだ。怒り狂うのも当然だと思うと、もうお詫びの言葉もない。
知らなかった、なんて言い訳したって、相手にしてみたら「そういうことじゃない」って罵りたくもなるだろう。
とにかく、早く謝罪しなければ。
私はギュッと震える唇に力を入れ――勢いよく頭を下げた。
「え? 山内さん?」
「本当にっ……申し訳ありませんでした!」
土下座した方がいいかな? その方がこちらの誠意は伝わるだろうか?
それとも、すぐに用意できるだけでもお金を出した方がいいの?
なんといっても、誘ったのは紛れもなく私の方。
悪いのは100%私なんだから、と腹をくくり、膝をつこうとしたんだけど――
「ちょっとちょっと、あなたは何も悪くないでしょ? 謝る必要なんてないわ」
いつもと変わらない微笑みと共に言われ、私はもちろん激しくかぶりを振る。
「そんなことありませんっ悪いのは全部私で……っ」
「そうやって自分を責めるのはよくないわ。ろくでもない男と付き合ってたからって、それはあなたのせいじゃないもの」
「いえ、そんなこ――……ぇ……と、はいっ?」