ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
先週金曜日の夜、私は勤め先の副社長・村瀬貴志さんに初対面を装って近づき、一夜を共にしてしまった。
シェルリーズホテルのバーに出入りしてるみたいだって噂を耳にして思いついたことだったけど、まさか本当に会えて、そして本当に抱いてもらえるとは思わなかった。
確かに、潔癖そうな外見を裏切って、彼の女性関係が相当ルーズらしいってことは有名だけど……やっぱり今でも信じられないくらい。
そして今日は月曜日。
あの夜以降初めて彼と顔を合わせる日でもある。
当然、昨夜はほとんど眠れなかった。
今も緊張のあまりガチガチになってたりして。
メイクと服で、別人かというくらいに化けていたし、バレるはずはない、と思う。
思うけど、一応今朝はいつもよりメイクはさらに薄めに、髪はアップに。体の線を隠すようなゆったりしたチュニックとチノパンを選んだ。これくらいなら、なんとかオフィスカジュアルの範囲内だろう。
とにかく、あの夜を少しでも思い出させるような恰好はしばらくしない方がいい。一夜の遊び相手が社内にいたなんて知ってしまったら、向こうだって気まずいだろうから。念のため。
「ほんとに大丈夫です。遅刻しちゃうんで、行きますね」
昨夜深酒しちゃって手元が狂っちゃって……とまだごちゃごちゃ恐縮してる中田さんに頭を下げて、歩き始めた。