雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「まあ、雨宮くん、立派になって」

課長の事を雨宮くんと呼ぶのは、シネマポールスターの支配人の藤原さん。品よくまとめたシルバーヘアと、藤色のワンピースがよく似合っている可愛らしい老婦人。若い頃はかなりの美人だったのではないかと伺わせる顔立ちだ。

課長と私は映画館の事務所内にある応接室にいた。

応接室の壁には昭和のスターから現代活躍中の人気俳優、大物監督の色紙までが貼られ、この映画館が今も現役である事を感じさせる。

映画会社の人間としてこの映画館を知らなかったのが恥ずかしくなってくる。

「藤原さんは全くお変わりなく、お若いままで驚きました」
「雨宮くん、お世辞が言えるようになったわね」

ふふっと笑った藤原さんに、いやーと、戸惑ったような表情を浮かべる雨宮課長が新鮮。

「そう言えばもう、7年前になるかしらね。リカちゃんが来てくれたのよ」

リカちゃん……?
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