雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「留守にするから、声をかけておこうと思って」

そう言った雨宮課長の手にはタオルと、旅館の名前が入ったビニール製の巾着袋があった。

察するに……

「今から温泉ですか?」
「うん」
「私も行こうと思っていたんです」
「奇遇だね。一緒に行く?」
「はい。少し待ってもらえますか?」
「うん」
「あの、どうぞ」

廊下で課長を待たせるのも悪いので、部屋に入ってもらった。

「すぐに支度しますから」
「慌てないで。テレビでも見ているから」

8畳の座卓の前に座り、雨宮課長がついたままのテレビに視線を向ける。
浴衣姿でテレビを見る課長に見惚れそうになりながら、バッグと浴衣を掴んでユニットバスに入った。

もしかしたら一泊もあるかもしれないと替えの下着は持って来ていた。バッグからベージュ色の上下の下着を取りだしながら可愛らしさの欠片もないと思う。

もう少し可愛い下着を持ってくれば良かった。

ハッとする。
下着を意識するなんて雨宮課長と何かするみたい。

何か……。

ぽわんと雨宮課長を布団の上に押し倒して、浴衣を脱がせている所が浮かんでしまう。

なんてエッチな想像……!

きゃー、恥ずかしい。

自分の想像にぼっと顔中が熱くなる。

急いで浮かんだ想像を頭からかき消す。

それから深呼吸をして、雨宮課長と同じ白地に紺色の模様が入った浴衣に着がえる。

紺色の帯をウエストより少し上で結んで完成。

おかしい所はないよね?

上半身が映る鏡で確認。

よし、大丈夫。
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