雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「美味しくなかった?」

恥ずかしさにスプーンを持つ手を止めると、課長がこっちを見る。

「いえ、とっても美味しいです。その、紅しょうがを取っておくなんて、所帯じみた所をお見せして恥ずかしいというか」

課長がクスクス笑う。

「紅しょうがとか、お弁当のソースとか、お醤油とかをとっておく奈々ちゃんに俺は好感持てるよ」

ソースもお醤油も残ってしまって、捨てるのがもったいなかったから、卵コーナーの所に置いておいた。

課長に全部見られていたのか。課長、冷蔵庫の中よく見ているんだな。

「あ、ごめん。気分を害したかな。食材を探していたから、いろいろと見てしまって」

「いえ、別に」

恥ずかしさを誤魔すように卵スープの入ったお椀を手に取る。

「奈々ちゃん、卵スープはまだ熱いよ」

課長に心配される。

もう課長、まだ猫舌ネタを。

「だから、そんなに猫舌じゃありませんって。いつまでそのネタで引っ張るんですか。昨日、旅館で茶わん蒸しを食べていた時は完全にスルーしたくせに」

「それは」と課長が気まずそうな笑みを浮かべた。
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