雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
私のマンションで会って以来、雨宮課長と関わる事は避けていた。

近くで見たのは二週間ぶり。

濃紺のスーツが似合っている。
いつ会っても課長は眩しい。

すぐに心臓が反応しちゃう。
好きって気持ちが溢れてくる。

だけど、今はそれを出せない。

「雨宮課長、何かご用ですか?」
「いや」

短くそれだけ言うと、課長はトレーを持ったまま背を向ける。

「総務カチョーさんは女優だけじゃなくて、女子社員にも手を出しているのか」

すぐ隣に座っていた男性社員たちがからかうように囁いた。

いけない。何とかしなければ。

立ち上がり、雨宮課長の背中に向かって叫んだ。

「雨宮課長、迷惑です! プライベートな事に口を出したくありませんが、あんな写真、うっかり撮られないで下さい! みんな迷惑しているんです! ちゃんと説明して下さい!」

みんなが思っている事をぶつければ、少しはみんなのモヤモヤが落ち着くはず。

いつも守られてばかりだから、今度は私が課長を守りたい。

「ちょっと奈々子」

桃子がおろおろする。

雨宮課長がゆっくりとこっちを向く。

お願い。課長。怒らずに謝って。
謝ればきっとこれ以上は風当りは強くならない。
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