雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「中島ちゃん、聞いたよ」

ランチから戻ると、栗原さんに声をかけらた。

「何がですか?」
「社食で雨宮課長を叱ったんだって」

もう噂になっているんだ。

「いやー、中島さんは肝が据わっているね。中島さんのおかげで温かい雰囲気になったらしいね」

風見係長が話に入ってくる。

「そうなですよ!」

まりえちゃんが目をキラキラさせて立ち上がった。

「私も今日は社食行ってたんですけど、みんなで雨宮課長を見守ろうって感じになったんですよ。中島さんが言ったおかげですよ。本当に良かったです。最近、課長の陰口聞くの辛かったんですけど、中島さんのおかげで陰口も減ります。中島さん、ありがとうございます!」

まりえちゃんにハグされる。

「私は何も。雨宮課長が正々堂々と謝罪する姿にみんな心が打たれたんだよ」

まりえちゃんの目がさらにキラキラと輝く。

「雨宮課長の謝罪、超カッコ良かったですよね! ぐっときちゃいました。佐伯リカコと16年来の友人って言っていましたけど、きっと課長、ずっと片思いだったんですよ。それでようやく友人以上に見てもらえるようになって……。人気女優と会社員の秘密の恋。くぅー萌える!」

まりえちゃんの可愛らしい想像に上手く笑えなくなる。
二人が恋人になる話を聞くのは辛い。

「まりえちゃん、妄想はその辺で終わりにしようね」

栗原さんがからかうように笑った。

「あの、皆さん、そろそろ会議の時間です。今日は雨宮課長も参加されますので、遅れない方がいいと思いますが」

後藤さんに言われて、ハッとする。
そうだった。これから雨宮課長も入れた会議があった。

「創立50周年のパーティー。今日は雨宮課長への報告会だから、みんなしっかり頼むぞ」

風見係長の声に「はい」とみんなで緩く返事をし、席を立った。
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