雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
疋田さんは総務部に配属になった初日に、最初に声をかけた女性だった。それから、顔を合わせれば雑談ぐらいはするようになった。
「雨宮課長が遅れていて、ごめんね」
『うちの課長』って表現に違和感を覚える。
雨宮課長は総務課全体の課長だから、私たち庶務係の課長でもある。
「いえ」
「なんか緒方専務に呼び出されているみたい。週刊誌の事だと思うけどね。社内でこれだけ噂になっているから」
心配になる。
雨宮課長、大丈夫かな。
「中島さん、うちの課長を叱って謝らせたらしいじゃない。公衆の面前で上司に恥をかかせるのはどうかと思うけど」
アイシャドウの濃い目がジロリとこっちを向いた。
敵意のある視線……。
さっき会議室で感じたものだ。
疋田さんが手伝いに来たのは、社食での件を注意したかったからだ。
私の立場で課長に謝るように言った事は疋田さんや、総務部の社員を不快にさせるものだったかもしれない。でも、あの場では私が憎まれ役になるしかなかった。自分のした事に後悔はない。
「出過ぎた真似をしてすみません」
「中島さん、宣伝部にいた時は阿久津部長に噛み付いたんだって? 凄いよね。上司に意見するって。だけど、総務部ではやめて。総務は平和なの。上司に意見するとかってないから。波風立つような事はしないで。今度うちの課長を侮辱するような事をしたら許さないから」
最後の言葉が強く響いた。
疋田さんの強い怒りを感じる。
「本当にすみませんでした。今後は気をつけます」
頭を下げた。
私はどう思われてもいい。それで雨宮課長の立場が守れるのなら構わない。
全ての社員を敵に回しても、課長を守りたい。
だって課長は知らない所でいつも私を守ってくれたもの。
「雨宮課長が遅れていて、ごめんね」
『うちの課長』って表現に違和感を覚える。
雨宮課長は総務課全体の課長だから、私たち庶務係の課長でもある。
「いえ」
「なんか緒方専務に呼び出されているみたい。週刊誌の事だと思うけどね。社内でこれだけ噂になっているから」
心配になる。
雨宮課長、大丈夫かな。
「中島さん、うちの課長を叱って謝らせたらしいじゃない。公衆の面前で上司に恥をかかせるのはどうかと思うけど」
アイシャドウの濃い目がジロリとこっちを向いた。
敵意のある視線……。
さっき会議室で感じたものだ。
疋田さんが手伝いに来たのは、社食での件を注意したかったからだ。
私の立場で課長に謝るように言った事は疋田さんや、総務部の社員を不快にさせるものだったかもしれない。でも、あの場では私が憎まれ役になるしかなかった。自分のした事に後悔はない。
「出過ぎた真似をしてすみません」
「中島さん、宣伝部にいた時は阿久津部長に噛み付いたんだって? 凄いよね。上司に意見するって。だけど、総務部ではやめて。総務は平和なの。上司に意見するとかってないから。波風立つような事はしないで。今度うちの課長を侮辱するような事をしたら許さないから」
最後の言葉が強く響いた。
疋田さんの強い怒りを感じる。
「本当にすみませんでした。今後は気をつけます」
頭を下げた。
私はどう思われてもいい。それで雨宮課長の立場が守れるのなら構わない。
全ての社員を敵に回しても、課長を守りたい。
だって課長は知らない所でいつも私を守ってくれたもの。