雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「へえー。彼女いるんだ。前はいないって言っていたのに。もしかして最近できた?」

冷やかすような佐伯リカコの声がする。

「そうだよ」
「ふーん。最近なんだ」
「何だよ」
「妬けるなと思って。拓海はもう私の事好きじゃないの? 私たち嫌いで別れた訳じゃないでしょ?」

なっ、何言ってるの?

障子越しに離れていた二人の影が重なったように見えた。

「リカ、くっつくな」
「いいじゃない。元夫婦なんだから」
「やめろ」
「焦ってるの? 拓海かわいい」

何このやり取り……。
嫉妬で胸が焦げて苦しくなる。

「やめろって言っているだろ!」

障子越しに背の高い影が立ち上がるのがわかった。

あ、拓海さんがこっちに来る!

慌てて、女子トイレの中に入って隠れた。

顔を合わせたくない。
きっと感情的になって怒ってしまうから。

拓海さんに嫉妬でいっぱいの私を見せたくない。
拓海さんといる時は笑顔でいたい。

でも、今は笑顔でいられない。

はあ。こんな現場見たくなかったな。
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