雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「中島さん、コーヒーおごるよ。田中さん、中島さんのお会計はこれで」

雨宮課長が社員証をバリスタの人に渡した。
社員証は電子マネーのカードにもなっている。

「い、いえ。そんな、申し訳ないです」
「この間、不味いアイスコーヒーもどきを飲ませたお詫びだから」

ファミレスでの事が蘇る。

雨宮課長との特別な時間。

雨宮課長が覚えていてくれた事が嬉しい。

「でも、後輩の分も買うので」
「二人分でいいよ。えーと、何と何?」
「あの、じゃあ、カフェオレと本日のブレンドで」
「他にテイクアウトでブレンド一つお願いします」

雨宮課長がバリスタの人に言った。
テイクアウトのブレンドは雨宮課長の分なのかな。

「ごちそうさまです」

コーヒーを受け取ってお辞儀をした。

「いえいえ」と少し照れくさそうな笑みを浮かべて雨宮課長が応える。眼鏡の奥の瞳と目が合った。普通だったらすぐに逸らすけど、なんか逸らせない。じっと見てしまう。

「中島さん、見つめすぎ」と雨宮課長に言われて頬と背中が同時に熱くなる。すみませんと、あたふたしていると「じゃあね」という柔らかい声が下りて来た。

その後も、テイクアウトのコーヒーを受け取った雨宮課長がカフェバーから立ち去る背中を視線で追いかけた。

どうした訳か、今週は社内で雨宮課長を見かけるとずっと目で追ってしまう。

そうだ。ブルーベリーマフィンを買って、あとでコーヒーのお礼に総務のオフィスに持って行こう。

ウキウキとしながらバリスタの人にテイクアウトでブルーベリーマフィンを注文した。
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