雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「栗原さん、これお土産です」
渡しそびれていたケーキ屋の袋を差し出すと、栗原さんが笑顔を浮かべてくれた。

「ありがとう。ケーキ?」
「フルーツタルトです」
「じゃあ、あとで皆で食べよう」
「はい」
まりえちゃんが嬉しそうに返事をした。

「ところでご主人は?」
「今日は仕事で幕張まで行ってる」

栗原さんがタルトの箱を冷蔵庫に仕舞いながら答える。

「何のお仕事なんですか?」

まりえちゃんが尋ねる。

「カメラマン。今日は結婚式の撮影だって」
「えー! 凄い!」

まりえちゃんの高い声が響く。

「全然すごくないよ。お給料安いし」

栗原さんが苦笑い。

「でもさ、好きな事を仕事にしていてカッコイイんだよね」

そう言えば拓海さんが、大学時代は栗原さんのご主人も映画研究会のサークルだったと言っていた。その頃からご主人はカメラをやっていたのかな。

「ご主人との出会いは映画研究会でしたっけ?」

栗原さんが意外そうにこっちを見る。

「拓ちゃんから聞いた?」
「拓ちゃん?」

まりえちゃんがキョトンとする。

「あ、雨宮課長」

栗原さんが言い直す。

「栗原さん、雨宮課長を拓ちゃん呼びですか!」

さらにまりえちゃんが驚く。

「友達だからね」

栗原さんがそう言った所で栗原さんのスマホが鳴る。

「ちょっと、ごめん」

栗原さんがスマホを持ってキッチンを出て行く。

ご主人からの電話かな?
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