雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
栗原さんが連れて来てくれたのは二階の部屋。

ご主人の仕事部屋らしき場所だった。スチールラックにはカメラなどの機材が並んでいる。

「ここなら静かだから。こうくんとみっくんも入って来ないし」
「ご主人の部屋ですか?」
「うん。中々いい眺めでしょう」

栗原さんがスチールラックの方に視線をやる。

「プロのカメラマンって感じしますね」
「ギリギリやっている感じだけどね」

栗原さんが穏やかな笑みを浮かべる。
ご主人が好きなんだなってわかる表情だ。

「いろいろとすれ違う事もあるけどさ、とりあえずは思っている事をぶつけてみたら?」

栗原さんは一体何の事を……?

「拓ちゃんと、つき合っているんでしょ? さっき電話で事情は聞いたよ」

電話……。

「友達からの電話って、まさか雨宮課長?」

栗原さんが頷いた。

「必要なら今日は拓ちゃんと泊まっていってもいいよ。家に泊まればパパラッチの目も誤魔化せるでしょ」

栗原さんは全部わかってくれているんだ。
栗原さんの気遣いがありがたくて、目の奥がまた熱くなった。

「もう、中島ちゃん、そんな涙目になって。女の子なんだから」
「すみません……。なんか、いろいろと込み上げてきて」
「落ち着いたら下においで。まりえちゃんが帰ったら二人きりにしてあげるから」

そう言って栗原さんは部屋から出て行った。
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