雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
栗原さんが頷いた。
「でも、拓ちゃんが異動の希望を出したのは優真君が病気になってからだったんだ。宣伝部から離れたくなかったみたいで。だけど、優真君が病気になって仕事よりも家族が大事だってやっと気づいたって言っていた。それで総務部に異動してからは、拓ちゃんも優真君に付き添って病院に行くようになったんだけど、リカコさんとの仲は相当冷え込んでいたみたいで。それに優真君の病状はどんどん悪化するし。拓ちゃんなりに優真君の看病も、リカコさんとの仲も頑張っていたんだけど」
栗原さんが深く息をつく。
「リカコさんて感情的な所があって、優真君が病気になったのは全部、拓ちゃんのせいだって毎日のように拓ちゃんを責めていたらしいの。私も一度、リカコさんが拓ちゃんに怒っていたの聞いた事ある。感情的に当たられても、拓ちゃん、言い返す事なくて。ごめん、俺が悪かったとしか言わないの。リカコさんの言葉全部受け取めて、謝っている姿が、なんか拓ちゃんらしいって言うか。拓ちゃんだって優真君が病気になって辛いのに、リカコさんは拓ちゃんがそんな風に思うのも許さないみたいな所があって、あれは本当に聞いていて辛かった」
拓海さんと佐伯リカコの間にそんな事があったなんて思わなかった。
優真君の病気の事まで拓海さんのせいにするのは酷い。
「だから私は拓ちゃんとリカコさんが離婚したのは良かったと思うよ。リカコさんは拓ちゃんの顔を見れば怒りしか湧いてこないみたいな状態だったもの。優真君のお葬式でもリカコさんが拓ちゃんを罵っていたのも聞いたし。まあ、リカコさんも悲しくて、当たる所が拓ちゃんしかなかったんだと思うけどさ。でも、当たられる拓ちゃんだって、我が子を亡くして胸の痛い思いしているんだよ。私は拓ちゃんが倒れるんじゃないかと心配で堪らなかったよ」
栗原さんの話に目頭が熱くなる。
拓海さん、苦しかっただろうな。
優真君が病気になって、毎日、責められて、それを受け止めて……。
しかも優真君が亡くなって。
もしかしたら拓海さんは今でも、優真君の事で佐伯リカコに負い目があるんじゃ。だから、恋人のふりも引き受けたのかも。
まさか佐伯リカコはそれをわかっていて拓海さんにつけ込んだの?
「中島ちゃん、ごめん。こんな話」
「いえ。聞けて良かったです」
「でも、拓ちゃんが異動の希望を出したのは優真君が病気になってからだったんだ。宣伝部から離れたくなかったみたいで。だけど、優真君が病気になって仕事よりも家族が大事だってやっと気づいたって言っていた。それで総務部に異動してからは、拓ちゃんも優真君に付き添って病院に行くようになったんだけど、リカコさんとの仲は相当冷え込んでいたみたいで。それに優真君の病状はどんどん悪化するし。拓ちゃんなりに優真君の看病も、リカコさんとの仲も頑張っていたんだけど」
栗原さんが深く息をつく。
「リカコさんて感情的な所があって、優真君が病気になったのは全部、拓ちゃんのせいだって毎日のように拓ちゃんを責めていたらしいの。私も一度、リカコさんが拓ちゃんに怒っていたの聞いた事ある。感情的に当たられても、拓ちゃん、言い返す事なくて。ごめん、俺が悪かったとしか言わないの。リカコさんの言葉全部受け取めて、謝っている姿が、なんか拓ちゃんらしいって言うか。拓ちゃんだって優真君が病気になって辛いのに、リカコさんは拓ちゃんがそんな風に思うのも許さないみたいな所があって、あれは本当に聞いていて辛かった」
拓海さんと佐伯リカコの間にそんな事があったなんて思わなかった。
優真君の病気の事まで拓海さんのせいにするのは酷い。
「だから私は拓ちゃんとリカコさんが離婚したのは良かったと思うよ。リカコさんは拓ちゃんの顔を見れば怒りしか湧いてこないみたいな状態だったもの。優真君のお葬式でもリカコさんが拓ちゃんを罵っていたのも聞いたし。まあ、リカコさんも悲しくて、当たる所が拓ちゃんしかなかったんだと思うけどさ。でも、当たられる拓ちゃんだって、我が子を亡くして胸の痛い思いしているんだよ。私は拓ちゃんが倒れるんじゃないかと心配で堪らなかったよ」
栗原さんの話に目頭が熱くなる。
拓海さん、苦しかっただろうな。
優真君が病気になって、毎日、責められて、それを受け止めて……。
しかも優真君が亡くなって。
もしかしたら拓海さんは今でも、優真君の事で佐伯リカコに負い目があるんじゃ。だから、恋人のふりも引き受けたのかも。
まさか佐伯リカコはそれをわかっていて拓海さんにつけ込んだの?
「中島ちゃん、ごめん。こんな話」
「いえ。聞けて良かったです」