雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
久保田に電話すると怒ったような声がした。

「中島さん、どこにいるんですか! 電波も届かない山奥にでもいるんですか!」
「休日に人がどこにいようといいじゃない。何よ」
「大変です! 雨宮課長と佐伯リカコさんが心中未遂を」

え?

「心中未遂?」

「マスコミには流れてませんから。誰にも言わないで下さい。それから2人が入院している病院に来て下さい。マネージャーの森さんが中島さんと話したいそうです。詳しい事はそこで話しますから」

電話はそこで切れ、メッセージアプリに病院の地図が送られて来た。

雨宮課長と佐伯リカコが心中未遂?

だって拓海さんはここに……。

「奈々ちゃん、どうした?」

拓海さんがこっちを見る。
思わず拓海さんの腕を掴んだ。幽霊じゃない。ちゃんと実体がある。

「何だい?」

拓海さんが首を傾げる。

「あの、落ち着いて聞いて下さい。佐伯リカコと雨宮課長が心中未遂したそうです」

眼鏡の奥の瞳が大きく揺れた。
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