雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
大学病院の休日診療用の出入口まで行くと、スーツ姿の久保田が立っていた。

「中島さん!」

私の姿を見つけて駆けてくる。
久保田の表情は深刻で、佐伯リカコの容態が楽観視できないものだとうかがわせる。

「久保田、何があったの?」
「そちらは?」

警戒するように私の隣に立つ、拓海さんに久保田が視線を向けた。

「久保田君、僕だよ」

拓海さんがマスクを取ると、久保田がこれ以上ない程驚いた顔をする。

「あ、あ、雨宮課長!」
「しっ! 声が大きい」

私が注意すると久保田がハッとしたように口を押さえる。

「すみません。あまりにも驚いて。雨宮課長も運ばれたって聞いていたから」
「この通り、僕は大丈夫だよ。佐伯リカコは男と運ばれたんだね」
「はい。マネージャーの森さんの話では男は雨宮課長だって」

多分、運ばれた男は佐伯リカコの不倫相手だ。
男の存在を久保田に言う訳にはいかなかったから、拓海さんだって事にしたんだ。

「それで、二人は今どこに?」
「6階の集中治療室で治療中だと聞いています。まだ意識が戻らないようで」
「意識が!」

拓海さんが心配そうに口にした。
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