雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「久保田、ダメ。私、好きな人いるから」
「僕を好きになって下さい」
「できないよ」
「今、中島さん、女の顔をしていますよ。僕の事を意識しているんですね」
「何言っているの。そんな事ないって」
「年下の男から溺愛されるって、最近の流行りじゃないんですか?」
「流行りって言われても私は違うから」
「僕は中島さんを悲しませたりしません。中島さんだけをいつも見ています」

熱い瞳に見つめられてドキドキする。
久保田の言葉に揺れる。

でも、私が好きなのは……。

「ごめん。久保田。どんなに口説かれても、雨宮課長が好きなの」
「苦しい想いをしても?」
「うん。苦しくても」
「バカですね。僕を選んだ方が楽なのに」
「楽とか、そういう問題じゃないから」
「こんな事になるなら、中島さんが宣伝部にいた時に口説いておけば良かった」

久保田が寂しそうに口の端を上げる。

「中島さん、総務に異動してまだ一ヶ月半ですよ。なんでたった一ヶ月半で恋に落ちてるんですか。僕とは五年一緒にやって来ても恋に落ちてくれなかったのに」

恨めしそうに久保田がため息をつく。

「久保田、ごめん」

それ以外の言葉が見つからない。
久保田と5年一緒にいたけど、恋愛感情は全く湧かなかった。

拓海さんとはびっくりする速度で恋に落ちたのに。

拓海さんに会いたいな。
今も、佐伯リカコに付き添っているんだろうか。
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