雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
今夜のメニューは鯖の味噌煮、大根とワカメのお味噌汁、ほうれん草のお浸し、それから私が作った卵焼きとレンチンしたご飯だった。

拓海さんと一緒に台所に立って調理した。

鯖の切り身に何やら拓海さんは切り込みを入れていた。皮に井の字型に切り込みを入れる事で煮汁がしみやすくなって、皮が縮んで身が崩れるのを防げると教えてもらった。

言われてみればお母さんも鯖を煮る時、皮に切り込みを入れていたような気がする。その時は何とも思わなかったけど、意味のある事だったんだ。

それから拓海さんは調味料を入れた鍋に鯖の切り身を入れて、「落し蓋ある?」と聞いた。

「えーと」

落し蓋って何だっけ?

私を見て拓海さんがクスッと笑う。

「アルミホイルだったらあるかな?」
「はい。それなら」

拓海さんがアルミホイルで作った即席の落し蓋を鯖の上に直接かけるように置いて煮込んだ。その状態を実家で見た事がある。これが落し蓋か。

「落し蓋を使うと煮汁が蒸発するのを防げるし、煮物に味が均等にしみるんだよ。煮物を作る時は落し蓋は必須だよ」
拓海さんが説明してくれた。

「なるほど。落し蓋は煮物に必須なんですね。覚えておきます」
「なんか」と言って拓海さんがこっちを見る。
「何ですか?」
「また料理教室やっているみたいだなって」

昨日も栗原さん家で拓海さんに料理のコツを教えてもらい、まりえちゃんと一緒に感心しながら聞いた。

「ですね。おかげで拓海さんといると料理が上手になりそうです。拓海さん、これからも沢山、教えて下さい。私、拓海さんに作ってあげたいんです」

拓海さんにぎゅって抱きしめられて、びっくり。

「奈々ちゃん、可愛すぎる。今、キュンと来た」

私の方こそ、拓海さんにいきなりハグされてキュンとしますけど。
拓海さんといるとやっぱり幸せ。
< 257 / 373 >

この作品をシェア

pagetop