雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「何か飲み物でも買ってきましょうか?」

上映が終わってシアタールームが明るくなると、ハンカチの人に聞かれた。

「い、いえ」

喉が渇いていたけど、そこまでお世話になるのは気が引ける。

泣いた顔を見られるのが恥ずかしくて、ハンカチで顔を抑えたまま、何もいらない事を伝える為に首を振った。

「そうですか。では、僕はこれで」

隣で立ち上がる気配がした。

あと三本映画が残っていたから帰るとは思わなかった。

「あ、あの」

ハンカチから顔をあげると、もう男の人はいない。

ハンカチ返さなきゃ。
お礼も。

男の人を追いかけてロビーに出た。
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