雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
次の日の朝、会社に行っていると思っていた雨宮課長が爽やかさが際立つアイボリーのセーターとジーパン姿でキッチンに立っていたから驚いた。

「おはよう」と声をかけられて、頬が緩みそうになるのを我慢する。意味もなく笑ったら変な奴だって思われそうだし、雨宮課長がいてくれた事にほっとしている事も知られたくない。なぜか素直になれない。

どうやら雨宮課長は私が入院した次の日から私と一緒に休みを取ってくれていたようで、木、金、土、日もずっと一緒に過ごしてくれた。

洗濯も掃除も料理も全部、面倒を見てもらって、私が何かしようとすると、怪我人扱いされて、すぐにベッドに戻された。ゆっくり休めたけど、物凄く体力が余った。

ようやく迎えた月曜日。
今日から会社に行ける。お気に入りのライトグレーのパンツスーツを着て、リビングに行くと、ネイビーのスーツをカッコよく着た雨宮課長が既にいた。

「俺も病院に行くから」と言われて、コーヒーの入ったピンクのマグカップを持つ手が止まる。
「え?」
「会社に行く前に病院で抜糸してもらうんだろ? 一緒に行くから」
「一人で大丈夫ですよ。子どもじゃないんだから」
「俺が心配なんだ」
「大丈夫ですって」「ダメ。ついて行く」という押し問答が続き、雨宮課長は全く引かない。

雨宮課長は私の事、小学生だとでも思っているんだろうか。一人で大丈夫だと言っているのに、口を開く度に心配だと言う。そういう所、お父さんにちょっと似ているかも。

病院に付き添ってもらうのは大人として少し恥ずかしかったけど、雨宮課長が全く譲らないので、仕方なく折れた。
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